『パラサイト 半地下の家族』は意味がわかると怖い話
『パラサイト 半地下の家族』冒頭は、まるでコメディー映画のようです。
Wi-Fiを求めて家中をうろついたり、酔っ払いに対して抵抗したり、とキム一家の対応が面白いです。
とくにキム家が全員、豪邸へと潜り込んでいく様子は最高です。
それでも後半は一気にサスペンス映画へと切り替わっていきます。
半地下に住むキム家の悪臭
パク家の人たちは、事あるごとにキム家の「臭い」を指摘しています。
これこそ身体に染み込んでしまった半地下の臭いです。
パク家の主人は、運転手であるキム家の父の臭いをいつも気にしています。
更には息子のダソンも、ジェシカ先生と運転手が同じ臭いだと指摘しています。
『パラサイト 半地下の家族』の「半地下」住宅
夏は蒸し暑く、すぐにカビだらけになります。
キム一家が住む半地下は、まさにこの物件です。
南北朝鮮の対立が激化した背景からテロ事件が相次ぐようになり、半地下(パンジハ)は設置されるようになりました。
防空壕として半地下は機能しました。
その後、1980年代に起こった住宅危機の対応に、半地下の住宅の使用が認められたのです。
トイレは逆流しないようにと、高い位置に設置されています。
半地下は天井が低いために、まっすぐ立てない場所もあるような劣悪な環境です。
『パラサイト 半地下の家族』のネタバレ
『パラサイト 半地下の家族』最大のネタバレは、雨の夜にパク家に訪れた元家政婦によって知らされる地下室の存在です。
ここで一気にコメディタッチな前半から、シリアスな後半へと切り替わります。
- 豪邸の前の持ち主の時から同じ家政婦だった
- 元家政婦は「人の倍は食べる」と言われていた
伏線がしっかりと効いています。
元家政婦の夫・グンセが地下にいた
実は地下室には、元家政婦の夫・グンセが住んでいました。
元家政婦の夫(グンセ)が地下に住んでいる理由は、借金取りに追われていたからでした。
グンセはモールス信号を使って、手動で上の階のランプをつけたり消したりしていました。
『パラサイト 半地下の家族』を考察
- パク家(地上)
- キム家(半地下)
- 元家政婦の夫(地下)
パク家とキム家の対比だけでなく、地下という更なる格差の広がりにより物語の深みが増していきます。
「タテの構図」がより明確になっていくのです。
『パラサイト 半地下の家族』の対比に雨
- 高台から低地へと流れていく豪雨
- 豪雨は半地下へ流れ込んでいき、パク家の居住地を破壊
『パラサイト 半地下の家族』の雨は、タテの構図を強調しています。
『パラサイト 半地下の家族』のグンセ
- 半地下に住むキム一家
- 高台の豪邸に住むパク一家
『パラサイト 半地下の家族』のテーマは、格差社会です。
同じ4人家族ですが、その暮らしぶりは、天と地ほど違います。
更にはみ出した足には、地下に住むグンセを暗示していたのです。
『パラサイト 半地下の家族』のラスト
大雨の中、なんとか逃れることができたキム一家は、翌日、パク一家の息子ダソンの誕生日パーティの準備を手伝わされます。
ギウが家から持ち出せたのは、友人のミニョクからもらった水石くらいでした。
意を決したギウはパーティを途中で抜けだし、地下室へと向かいます。
その手には、水石です。
グンセが怖い
ギウは持っていた水石を落としてしまい、地下住人の夫グンセに反撃されてしまいます。
水石で頭を強打され、気絶してしまったのです。
そこから、グンセが暴れ出します。
衝撃のラストは、ぜひ『パラサイト 半地下の家族』本編でお楽しみください。
『パラサイト 半地下の家族』を観た感想
90/100点
『パラサイト 半地下の家族』は、とにかくストーリーが秀逸です。
どんでん返し映画のような伏線にも、またキム一家が暮らす半地下の家や豪邸にもまるで違和感がありません。
韓国の歴史や経済格差から、ストーリーが構成された素晴らしい映画だと思いました。
ちなみに、半地下の家と豪邸はセットで作られています。
半地下の家は周辺の路地裏も含めて、全てがセットだそうです。
家の中の小道具から壁のシミも、忠実に再現されているなど細部にも余念がありません。
対して豪邸の方も、家の前の通り以外はセットです。
本作の背景からも、韓国映画の技術力の高さがよく分かります。
まとめ:『パラサイト 半地下の家族』の感想は気持ち悪い?
- パク家の取り込み方が気持ち悪い
- ギテクは娘を見捨てて逃走している
- 後味が悪い
『パラサイト 半地下の家族』の感想には、「気持ち悪い」という評価も多いようです。
とくに、元家政婦の桃アレルギーを利用して、彼女を家から追い出す場面は「気持ち悪い」との評価が出ても仕方のないシーンでした。
ちなみに後味が悪いけれど「傑作」だと感じた作品について、『パラサイト 半地下の家族』のほかには『万引き家族』がすぐに思い浮かびました。
ポン・ジュノ監督は、『パラサイト 半地下の家族』に格差社会に対する問題意識を取り込みました。
韓国は競争社会であり、若者の5人に1人が実質失業者とも言われるほど失業率の高い国です。
『パラサイト 半地下の家族』のキム一家のやり方は、決して褒められるものではありません。
ですが暮らしを維持するために必死で生活する様子は、よく伝わります。
『パラサイト 半地下の家族』は格差社会を改めて、意識できる良作でしょう。