「もっと大きなヤマを狙いませんか? そうですね……死人がゴロゴロ出るようなヤマです」
ハリソン山中(豊川悦司)はフェティッシュな理想を掲げ、部下たちに提案します。
共犯者たちに100億円の不動産詐欺を持ちかけたのです。
Netflix『地面師たち』は実話を題材にした事件を取り扱っています。
その実行犯である辻本拓海(綾野剛)には、なんとモデルがいました。
彼の名は、カミンスカス操。
- 『地面師たち』のモデルとなったカミンスカス操のキャリア
映画を年間200本くらい楽しむとけいが書いています。
それではNetflix『地面師たち』のあらすじから見ていきましょう。
Netflix『地面師たち』のあらすじ
土地価格が高い東京で、辻本拓海はハリソン山中と名乗る不動産詐欺師グループのリーダーと出会います。
- 「図面師」の竹下
- 「手配師」の麗子
- 「法律屋」の後藤
彼らと供に、拓海は「交渉役」として不動産詐欺を実行していきます。
そんなある日、ハリソン山中は言いました。
「もっと大きなヤマを狙いませんか? そうですね……死人がゴロゴロ出るようなヤマです」
作品名 | Netflix『地面師たち』 |
---|---|
公開年 | 2024 |
話数 | 7 |
原作は小説『地面師たち』
小説『地面師たち』は積水ハウスの事件をモデルに描かれています。
2017年に実際に起こった「積水ハウス地面師詐欺事件」です。
積水ハウス地面師詐欺事件とは
品川区西五反田にある旅館「海喜館(うみきかん)」の土地約600坪の購入代金として、約55億円がだまし取られました。
住宅メーカー大手の積水ハウスが詐欺にあったのです。
地面師の手口はドラマと同様
地面師グループは、ニセモノの地主役(なりすまし)と偽造した身分証を用意していました。
所有者による正規の取引に見せかけるためです。
巧みに積水ハウスを騙す様子は『地面師たち』と実話を比べても大差ありません。
ただし、この事件には詐欺師が巧みだったという単純な理由だけではなく、積水ハウスの複雑な社内事情も関係していました。
その闇に触れてみたい方は経済ルポ『保身 積水ハウス、クーデターの深層』をオススメします。
なぜ地面師に大手メーカーが騙されたのか。
会社組織ならではの闇が、そこにはありました。
Netflix『地面師たち』を観た感想
91/100点
ハリソン山中の存在感がバツグンでした。
くせ者を束ねる恐怖のリーダーには、名言が多い。
「最もフィジカルで、最もプリミティブで、そして最もフェティッシュなやり方でいかせていただきます」
一度は「どういう意味だ?」と首を傾げつつも、脳裏からまるで離れていかない名ゼリフでした。
作品全体としても不動産詐欺をする工程が緻密であり、リアルです。
騙す側と騙される側の心理描写が見事でした。
不動産の売買を巡って交渉する場面では、まるで現場に居合わせているかのようなハラハラ感があり、息を呑みます。
『地面師たち』のキャスト
辻本拓海(つじもと たくみ) – 綾野剛: 地面師グループの冷静な交渉役。
ハリソン山中(はりそん やまなか) – 豊川悦司: 地面師グループのリーダー。
竹下(たけした) – 北村一輝: 詐欺の対象となる土地の情報屋。
後藤(ごとう) – ピエール瀧: 書類偽造や交渉を担当する元司法書士。
麗子(れいこ) – 小池栄子: 地主の「なりすまし犯」を用意するキャスティング担当。
長井(ながい) – 染谷将太: 公的文書を偽造する職人。
オロチ(おろち) – アントニー: 竹下の子分。
辰(たつ) – リリー・フランキー: 警視庁捜査二課の警部。
倉持(くらもち) – 池田エライザ: 警視庁捜査二課の巡査部長。
青柳(あおやぎ) – 山本耕史: 大手デベロッパーの開発部長。
須永(すなが) – 松尾諭: 石洋ハウスの役員。
川井菜摘(かわい なつみ) – 松岡依都美: 光庵寺の住職。
楓(かえで) – 吉村界人: ホストクラブのナンバーワン・ホスト。
真木(まき) – 駿河太郎: 新興の不動産デベロッパーの社長。
林(はやし) – マキタスポーツ: 不動産ブローカー。
個人的にリリーフランキー演じる警部とハリソン山中が対峙する場面は緊張感があり、見応えたっぷりでした。
また交渉役の辻本拓海を始め、ハリソン山中ら地面師グループのキャストは特に個性が際立っています。
地面師グループの主要メンバー
- リーダー・ハリソン山中(豊川悦司)
グループを組織する。
元暴力団幹部であり、バブル期には地上げ屋として名を馳せた。
- 交渉役・辻本拓海(綾野剛)
架空の土地取引の現場責任者で、相手との交渉を担当する。
元不動産業で、父親が経営していた不動産会社の営業をしていた。
- 法律屋・後藤義雄(ピエール瀧)
土地取引に必要な証明書や書類を準備する元司法書士。不動産関係の法律に詳しい。
荒々しい関西弁が特徴的。
「もうええでしょう」
- 手配師・稲葉麗子(小池栄子)
本物の土地所有者になれるような人物を探す。
その後、なりすまし役に所有者の情報を徹底的に覚え込ませる。
- 図面師・竹下(北村一輝)
詐欺のターゲットとなる土地の情報を入手する。
その後、本物の土地所有者の身辺調査も行う。
- ニンベン師・長井(染谷将太)
偽造屋として、偽りの土地所有者の免許証やパスポートなどを偽造する。
詐欺の現場には同席しない。
ハリソン山中のモデルは内田マイク
ハリソン山中のモデルは内田マイクです。
内田マイクもハリソン山中と同じくチームを組んで地面師の詐欺を決行していました。
「コントロール役」や「銀行屋」たちが周りを固めています。
ハリソン山中との違い
内田マイクが裏切り者を殺害することはなかったようです。
部下には信頼されていたようで、詐欺で得た報酬の配分をメンバーの犯罪データや家庭的事情を加味して配分する徹底ぶりでした。
ただ本当は、もっとプリミティブな理由だったのかもしれません。
殺人罪の懲役は20年ほどですが、詐欺は10年程度だから。そんな背景もあります。
この内田マイクの下で働いていたのが、辻本拓海のモデルとなったカミンスカス操です。
『地面師たち』のモデルとなったカミンスカス操
実行リーダーであるカミンスカス操受刑者は、フィリピンから日本に移送されました。
これは63億円もの大金を騙しとった「積水ハウス地面師詐欺事件」で主犯格の一人としてマニラの入管当局に身柄を拘束されたからです。
カミンスカスは「積水ハウス地面師詐欺事件」の後、羽田空港からマニラ空港へ高飛びしました。
その結果、警視庁は大勢のなりすまし役など犯罪者たちを逮捕していたものの、積水ハウスの交渉現場に登場していた主犯の一人を取り逃がしていたのです。
カミンスカスは国際指名手配に
国際手配は容疑の軽重によって段階があります。
殺人は最も厳しい「赤色(レッドカード)手配」。
それ以外のランクは海外で発見しても、すぐに逮捕できない仕組みです。
カミンスカスは有印私文書偽造や公正証書原本不実記載容疑で逮捕状が出ていましたが、「赤色(レッドカード)手配」の一つ下の「青色(ブルーカード)手配」でした。
ですので高飛びしたカミンスカス当人は、当然、なかなか当局の説得に応じません。
ですが観光ビザの滞在期限が切れているなど、色々な問題が起きていきます。
こうしてフィリピン滞在69日目、遂にカミンスカスの身柄は取り押さえられました。
カミンスカス操の生い立ち
カミンスカス操こと小山操は1959年高知県南国市生まれです。
地元の高校を卒業後、上京しています。ですが、その後の動きは不明です。
紆余曲折を経て、カミンスカスはABCホームの部長になっており、その頃から『地面師』たちと接点を持ったといわれています。
地面師になった経緯
カミンスカスはABCホームの事件で実刑判決を受けて服役した後に、不動産ブローカーに転じましたが、金に苦労しています。
そうして転がり込んだ先が、サハダイヤモンドビルの土井淑雄のところでした。
サハダイヤモンドビルには、土井の会社「ビショップ・パートナーズグループ」があり、地面師たちの巣窟になっていました。
土井は「積水ハウス地面師詐欺事件」で16人目に逮捕された男です。
当然、カミンスカスも心を闇に染めていきました。
以上のように生い立ちは異なりますが、辻本拓海のモデルとなった男がいたとは驚きです。
まとめ
本記事ではNetflix『地面師たち』のモデルとなったカミンスカス操の現在に迫りました。
『地面師たち』は、あくまで犯罪者たちの物語です。
ただ実際の事件の裏側にあった歪さや、各キャラクターが抱えている葛藤や人間味が程よく交わり、『地面師たち』は魅力ある物語になっています。
ハリソン山中の凶暴性にも、必見です。
原作も面白いです。
本記事ではネタバレになるため『地面師たち』の題材となった積水ハウスの事件を詳しく説明しませんでした。
積水ハウスの事件とドラマを比較したい方は、以下のNOTEがオススメです。
ネタバレを含めつつ、なぜ『地面師たち』の事件が起こってしまったのか。
その真相に迫っています▼
参考URL:
https://news.yahoo.co.jp/articles/72fd4d748cdde295723b873c140a4d9c285498a8?page=1
https://gendai.media/articles/-/59125?imp=0
オススメ記事▼