日常の暮らしを、淡々と描いた作品があります。映画『パターソン』です。
とけいは本作を鑑賞後に、ふと思いました。
「パターソンは、純文学の読後感に似ている」と。
- 映画『パターソン』を手がけたジム・ジャームッシュ
- 映画『パターソン』の詩について
ネタバレは一切、ございません。
それでは、映画『パターソン』のあらすじから見ていきましょう!
『パターソン』のあらすじ
バス運転手は、街の名前「パターソン」と同じ名前のパターソンでした。
毎朝、パターソンは起きると、妻のローラにキスをします。
それから同じ道を通勤して、バスを走らせ、夜には帰宅します。
その後、いつものように愛犬と散歩をして、バーで1杯だけお酒を楽しみます。
平凡で単調な7日間――そのすべてが、美しいのです。
作品名 | パターソン |
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監督 | ジム・ジャームッシュ |
公開日 | 2017/8/26 |
上映時間 | 118分 |
キャスト | アダム・ドライバー/永瀬正敏 |
86/100点
『パターソン』は詩人

パターソンは、朝食を食べている時やバスを運転している時などに、常に詩を考えています。
そんな様子をいつも見ているパターソンのパートナーは、詩集を公にしようと勧めてきます。
しかし、パターソンは詩人と名乗ることに興味がありません。
一方で、他の人の詩には、興味があります。
詩人だと思われる人には、自らよく声を掛けています。
『パターソン』と詩

でも実際には、本人は詩人だと名乗っていません。
それでも、心は完全に詩人であるのです。
そんな映画『パターソン』では、多くの詩が登場します。
一つ、パターソンが尊敬する詩人ウィリアム・カーロス・ウィリアムズの詩を紹介します。
「たいしたことじゃないんだけど」
ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ
食べたよ
あのプラム
冷蔵庫に
あったやつ
たぶん君が
朝食のとき用に
とっておいた
あれだよ
ゆるしてくれ
本当においしかった
とても甘くて
とても冷たくて
ウィリアム・カーロス・ウィリアムズは、映画『パターソン』の舞台にもなったニュージャージーに実在する町パターソンで、生まれた詩人です。
1950年、パターソンの町全体を人間のメタファーのように書いた詩集『パターソン』で、全米図書賞を受賞しました。
ジム・ジャームッシュの映画には文学の匂いがする

そのためか映画『パターソン』では、絶妙な間が各シーンに組み込まれています。
日常や登場人物の感情に目を向けて、本作を鑑賞すると、また味わいが変わってくるでしょう。
ジム・ジャームッシュは、文学の「連作短編」を映画のフォーマットに活用した監督です。
その独自の作風が、ミュージシャンの友人を増やしたのかもしれません。
交友関係から映画出演に至ったミュージシャンも多く、ジョン・ルーリーやトム・ウェイツなどが有名です。
永瀬正敏が、『パターソン』のラストで登場
映画『パターソン』のラストシーンに、永瀬正敏が登場します。
ジム・ジャームッシュと永瀬正敏のコンビは、映画『ミステリー・トレイン』以来となります。
映画『パターソン』内で、永瀬正敏は、日本人詩人役を演じています。
日常の中にある非日常を体現したかのような二人のやりとりに、小説的な優雅なひとときを感じられることでしょう。
まとめ

ジム・ジャームッシュが『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』以来、4年ぶりに発表した長編映画が『パターソン』です。
映画『パターソン』は、あくまで平凡な日常を切り取っただけです。
ただ、7日間が川のせせらぎのように流れていき、時にハプニングを起こします。
そこで、実感するのです。
「平凡な日常こそ、何よりの幸せである」と。
ゆったりとした気分で日常の移ろいを感じられる映画『パターソン』を、ぜひこの機会に鑑賞してみてはいかがでしょうか?
(※本ページの情報は2022年8月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXT公式サイトでご確認ください。)